選んだ大きさは、このサイトの他の記事にも引き継がれます。
パドルの商品ページを開くと、「カーボン」「T700」「熱成形」といった言葉が並びます。どれを選べば回転がかかるのか、値段の差がどこにあるのかは、商品ページだと分かりにくいです。
この記事は、パドルの表面(ボールが当たる面)を詳しく解説します。読み終えると、商品ページを見ただけで、そのパドルが自分に合うかどうかを判断できます。
この記事でわかること
- カーボンとグラス、覚えるべき2つの面のちがい
- ザラザラがだんだん消えていく理由と、どれくらいで落ちるか
- 同じ「カーボン面」で値段が3倍ちがう理由(熱成形)
先に結論|パドルの面はカーボンかグラスかで決まる
打ったときの感触を決めているのは、パドルの表面の素材です。主に使われているのはカーボンかグラスファイバー(ガラス繊維の面)の2つです。
よく飛ばしたい:グラスファイバーの面。面がしなって弾き返してくれるので、力に自信がなくても飛びます
芯を外しても失速させたくない:カーボンの面。手に来る衝撃も小さくなります
回転をかけたい:面にザラつきがあるカーボンを選ぶ。商品ページの「スピン」の表記と、口コミの「ザラザラしている」という声が手がかりです
大会に出る予定:素材より先に「USA Pickleball公認」の表記があるかを見る
重さ・厚み・形も含めた選び方の全体は、パドルの選び方にまとめています。
表面の素材|覚えるのはカーボンとグラスの2つだけ
面の素材はいくつかありますが、日本で売っているパドルの大半はカーボンかグラスファイバーのどちらかです。この2つの違いさえ分かれば、商品ページはOKです。
◆ グラスファイバー|よく飛ぶ。芯を外すと弱い
ガラスの細い繊維を樹脂で固めた素材です。商品ページには「ファイバーグラス」と書かれることもありますが、同じものです。
打つと面がしなり、そのしなりが戻る力でボールを弾き返します。だから軽く当てただけでも飛んでくれます。力に自信がない人ほど楽に感じる素材です。
気をつけたいところも2つあります。しなって強く弾くぶん、当たった瞬間の衝撃が手に残りやすいこと。もうひとつは、芯から外れて当たった球が急に飛ばなくなることです。
入門モデルで多く採用されています。
◆ カーボン|芯を外しても失速しにくい
炭素の細い繊維を樹脂で固めた面です。「カーボンファイバー」も同じもので、「グラファイト」もカーボンの仲間として使われます。呼び名が統一されていないので、この表記だけで中身は見分けられません。
グラスより硬く、打ってもほとんどしなりません。しならないぶん面全体が同じように働くので、芯から少しずれて当たった球も失速しにくくなります。手に来る衝撃も小さくなります。
そのかわり、グラスファイバーと比べて反発が弱く作られています。そのため、ネット前での我慢比べの攻防(ディンク=ネット前にふわりと落とす球)はやりやすいです。
表面にザラつきをつけやすいのもカーボンのほうで、回転をかけたい人が選ぶのはこちらです。値段は5,000円台から3万円台まで幅があり、1万円以下でも選べます。
「カーボンは硬い、グラスはやわらかい」は打感では逆になります
材料として硬いのは、ガラス繊維よりカーボンのほうです。ただし、打ったときに手が受ける感触は異なります。
- グラスの面はしなって強く弾き返すので、衝撃が手に残ります
- カーボンの面は硬いぶん面全体が同じように働くので、やさしく感じます
◆ ケブラーと木製|最初の1本では気にしなくていい
残りの2つは、1本目を選ぶときには考えなくて構いません。
ケブラー混|1万5,000円前後〜 防弾チョッキにも使われる合成繊維。カーボンとグラスの中間の打球感で、2023年の終わりごろから増えてきました。ただし日本で買える数がまだ少なく、2本目以降の選択肢です
木製|1,000〜3,000円 重く、回転もかかりません。体験用と割り切るものです
つまり、パドルを探すときに見るのはカーボンかグラスかの2つだけ意識しましょう。
なぜザラザラだと回転がかかるのか|面がボールを引っかける
ボールに回転をかけているのは、面とボールのあいだの摩擦です。
ザラつきのある面は、当たった瞬間にボールを引っかけます。引っかかったボールは面の上で転がりながら離れるので、転がった分がそのまま回転になります。
ツルツルの面は、この引っかかりがありません。ボールはそのまま前へ抜けていくので、力が回転に変わらないのです。
ザラつきが回転を生むしくみ
面がボールを引っかけるか、引っかけないか。それだけの違いです
面を拡大したところ:細かい凹凸がボールを引っかける
引っかかったボールは、面の上で転がりながら離れます。転がった分がそのまま回転になります。
面を拡大したところ:引っかかるところがない
引っかかりがないと、ボールはそのまま前へ抜けます。力が回転に変わりません。
ふつうに打っている範囲では、どのパドルもボールを引っかけています。回転量の差が思ったより小さいのは、そのためです。
◆ ただし、回転量には上限が決まっている
面をどこまでもザラザラにできるわけではありません。USA Pickleball(アメリカの協会。パドルの規格はここが決めています)が、打つ面の粗さと滑りにくさに上限を決めています。
2026年9月まで:面の粗さは平均30マイクロメートル以下、滑りにくさ(動摩擦係数)は0.1875以下
2026年10月から:粗さではなく回転量そのものを測り、毎分2,100回転を超えるパドルは公認しない
※新しい基準が適用されるのは、2026年10月1日以降に公認を申請するパドルです。すでに公認を受けているパドルが測り直されるわけではありません。粗さについては、もう一つ別の測り方でも上限が決められています。
公認のパドルであれば、回転量は同じところで頭打ちになります。「回転がかかるパドル」を探すより、そのザラつきが何か月もつかを見るほうが、買ったあとの差になります。
ザラザラは消える|100球で回転量が2割近く落ちた
補足|減るのは、ザラザラの正体が樹脂だから
カーボンの層を重ねるとき、いちばん上に布を1枚かぶせて固め、あとではがします。すると布の織り目が樹脂の表面に写って、細かい凹凸が残ります。塗装せずにこの面を出したものを「生カーボン」と呼びます。
つまり、指で触れているのは炭素の繊維ではなく、繊維を固めている樹脂です。この樹脂はボールに削られるほどの硬さしかないので、打つたびに少しずつ欠けていきます。
パドルを固定して、時速110kmほどのボールを100球当てる試験があります。生カーボンのパドル1本と、削れにくい加工をしたパドル1本を比べた結果です。
生カーボンの面:毎分1,906回転 → 1,565回転(約18%減)。打った場所が目に見えて平らになった
削れにくい加工をした面:毎分2,138回転 → 1,948回転(約9%減)。見た目はほとんど変わらなかった
※どちらも1本ずつの測定です。別のモデルでは、生カーボンで100球のうちに3割近く落ちた例もあります。
実際のプレーでは、よく打つ人で2か月ほどでザラつきが薄くなります。塗装で作ったザラつきはもっと早く、強く打つ人だと数日で平らになることもあります。
100球打ち込んだあとに残った回転量
パドルを固定して、時速110kmほどのボールを100球当てた試験
生カーボンの面
試験前 毎分1,906回転 → 試験後 毎分1,565回転
回転量が約18%減った。打った場所が目に見えて平らになった
削れにくい加工をした面
試験前 毎分2,138回転 → 試験後 毎分1,948回転
回転量の減りは約9%。見た目はほとんど変わらなかった
面の粗さを測り直した別の試験でも同じ差が出ています。生カーボンは元の粗さの約8割、削れにくい加工をした面は9割以上を保ちました。
※海外の独立系レビューによる測定値(2026年)。どちらも1本ずつの測定です
ツルツルになっても、パドルが壊れたわけではありません
面が平らになっても反発力は落ちません。落ちるのは回転だけです。ネット前で止める球や、当てて返す打ち方が中心なら、そのまま使い続けられます。
汚れが詰まってザラつきが隠れているだけなら、落として戻せることもあります。やり方はパドルを長持ちさせる方法に書いています。
2026年に増えている「削れにくいザラつき」
生カーボンが削れやすい点をおぎなうために、セラミックや炭化ケイ素(硬い粒)を面に埋め込んだ表面が2025年から出てきました。メーカーごとに違う名前がついていて、商品ページには「Diamond Tough」「HexGrit」「Blue Endurance」のように書かれています。
削って粗さを測り直す試験では、この3つは元の粗さの9割以上を保ちました。生カーボンの平均は8割です。
変わったのは回転量の多さではなく、その回転量が何か月続くかです。
名前が付いていれば長持ちする、とは限りません
独自の名前を付けた面はほかにもありますが、別の試験では生カーボンと変わらない落ち方をしたものもあります。名前だけで決めず、その面の実測が出ているかを確かめてください。
※こうした表面は海外ブランドが先行しています。
同じ「カーボン面」で、値段が3倍違うのはなぜか
1万円のカーボン面と3万円のカーボン面は、表記の上では同じです。値段の差は、面そのものではなく中身と作りかたにあります。
作りかた 安いものは、面と中身を接着剤で貼り合わせます。熱成形カーボン(熱と圧力で一体に固めたつくり)は面がよじれにくく、打球が安定します
中身の素材 ハニカムコア(蜂の巣のように穴が並んだ中身。軽さと強さを両立できる)が標準です。上位モデルは縁までフォームで固めてあり、芯を外してもブレにくくなります
ザラつきの作り 削れにくい加工をした面は、材料そのものが高くつきます
ただし、1万円以下の売れ筋にも「T700カーボン」「16mmハニカムコア」「USA Pickleball公認」「熱成形」がひととおり並んでいます。表記だけで上位モデルと見分けるのは、もう難しくなっています。
面の素材は、値段の高さを見分ける材料にはなりません。同じ「カーボン」で予算内に収めたいなら、コアが16mmあるかを先に見てください。
熱成形(サーモフォーム)|面と中身を一体に固めたパドル
商品ページに「熱成形」「サーモフォーム」と書かれたものがあります。同じカーボン面でも打ち味がはっきり変わるので、値段の差を知りたいならここを見てください。
◆ 貼り合わせとの違い
パドルの中身は、蜂の巣のように穴が並んだハニカムコアです。ふつうのパドルは、この中身と面を接着剤で貼り合わせて作ります。断面はこうなっています。
図解パドルの中身は「蜂の巣」でできている
ハニカムコア(穴が並んだプラスチックの芯)
※ 中身の構造のイメージ図です。
熱成形は、この貼り合わせの工程を、面と中身を金型に入れて熱と圧力をかけ、一度に固める作りかたに置き換えたものです。
面がよじれにくい 強く打っても面がねじれないので、当たりが毎回そろいます
縁のほうで当てても失速しにくい 面と中身がつながっているので、力が逃げにくくなります
同じ厚みでも球が伸びる 貼り合わせのパドルより飛びが出ます
面の素材が同じカーボンでも、この作りかたが違うだけで別のパドルになります。
◆ 熱成形で起きること|中身がつぶれる
熱成形のパドルは、上の図のハニカムの穴が少しずつつぶれることがあります。つぶれた場所は、打つほど広がっていきます。
困るのは、つぶれると飛ばなくなるのではなく逆に飛びすぎることです。公認大会のパドル検査で引っかかることがあり、元には戻せません。
こうなったら使うのをやめる
- 打った音が「パンッ」から「ボコッ」に変わった
- 面の一部だけ、反発が強い(または弱い)
- 面が浮いてふくらんでいる、平らな机に伏せると浮く
確かめ方はパドルを長持ちさせる方法のセルフチェックと同じです。
◆ いま買うなら
ここ1〜2年は、中身の縁までフォームで固めたパドルが増えています。つぶれにくくしたつくりで、そのぶん値段は上がります。
1本目でここまで気にする必要はありません。1万円前後の熱成形モデルでも、貼り合わせのパドルとの差は打てば分かります。
Selkirk SLK Helix Pro商品名に「熱成形カーボンファイバー」と明記。カーボンとグラスを混ぜた面で、打球の衝撃が手に残りにくいタイプ。海外からの発送なので、届くまでに日数がかかります9,381円(2026年9月時点)・Amazonで見る
「T700」とは何か|カーボン繊維のグレード名
商品ページで目立つ「T700」は、実在するカーボン繊維のグレード名です。
何の名前か カーボン繊維につけられた種類の名前です。日本の東レが作っている繊維で、自転車や釣り竿にも使われています
強い繊維 安いグレードのカーボンより、引っぱっても切れにくい繊維です。折れにくさ、へたりにくさにつながります
しなりにくさは同じくらい 力をかけたときのしなりにくさは、安いグレードとほとんど変わりません
つまりT700は丈夫さの話であって、ザラつきの話ではありません。回転がかかるかどうかは面の仕上げ方で決まるので、T700と書いてあること自体は、回転のかかりやすさを表していません。
いまは5,000円台のパドルにもT700と書かれています。表記を見つけたら、あわせてザラつきの有無も確かめてください。
商品ページのどこを見るか|買う前の3ステップ
1. 面の素材を見る 「グラスファイバー」「コンポジット」ならグラスの面と判断できます。「カーボン」「グラファイト」「T700」ならカーボンの面です。まずはこのどちらかが分かれば十分です
2. ザラつきがあるかを確かめる 商品ページに「スピン」「Spin」「未加工カーボン」「Raw」とあれば、ザラつきのある面です。書いていないときは、口コミに「ザラザラしている」「回転がかかる」という声があるかを見ます
3. 公認の表記を確かめる 大会に出る予定があるなら「USA Pickleball公認」「USAP Approved」を探します。ないものは仲間内の練習用と割り切ってください
素材の表記がどこにも見つからない商品は、面の作りを確かめられません。値段が同じなら、書いてあるほうを選びましょう。
やってはいけないこと|面を削る・滑り止めを塗る
回転をもっとかけたくて面をやすりで荒らしたり、滑り止めを塗ったりするのは反則です。公式ルールでは、打つ面に次のものを含んではいけないと決まっています。
打つ面に入れてはいけないもの
- 紙やすりのような粗さ
- 滑り止め塗料や、砂・ゴムの粒を混ぜた塗料
- 回転を増やすためのあらゆる材料
- 相手のまぶしさになる、反射する仕上げ
公認大会では、試合中に規格外のパドルを使っていることが分かると、その試合は負け扱いになります。試合が始まる前に分かったときは、公認のものに替えれば罰はありません。終わったあとに分かった場合は、結果はそのままです。
樹脂の層を削れば面そのものが弱くなるので、性能の面でも損をします。
反対に、認められている手入れもあります。エッジガードテープ(縁に貼る保護テープ)の貼り替え、重りのテープを貼ること、グリップの巻き替えは問題ありません。ただし、手を入れたあとも規格を満たしている必要があります。
※公式ルールブック(2026年版)3.D.5・3.D.6・18.A より。国内大会は主催者が採用するルールが違うので、出場前に大会要項を確認してください。
面の素材から選ぶなら|40秒診断
ここまでの話を、8つの質問に落とし込んだ診断です。経験や体格に答えると、重さ・厚み・面の素材・形の4点から、いま買えるモデルをランキングで出します。
パドル診断|あなたに合う一本が見つかる
重さ・コアの厚み・表面素材・形の4点から絞り込んで、いま買うべきモデルをランキングで出します。
よくある質問
Q1|ザラザラがなくなったら、買い替えですか?
回転をかけない打ち方が中心なら、そのまま使えます。面が平らになっても反発力は落ちないからです。替え時は、面の一部だけ反発がなくなる、打った音が変わる、面が反る、といったサインが出たときです。
見分け方はパドルを長持ちさせる方法のセルフチェックにまとめています。
Q2|グラスファイバーは初心者向けと聞きました。カーボンのほうがいいですか?
どちらが上ということはありません。よく飛ぶ面がほしい人、力に自信がない人はグラス面が扱いやすいです。
芯を外した球を失速させたくない人、回転をかけたい人はカーボン面です。1万円以下にもカーボンのパドルは多いので、予算で決める必要はありません。
Q3|面をやすりで少し荒らせば、回転は増えますか?
反則です。打つ面に紙やすりのような粗さを持たせることは、公式ルールで禁止されています。
性能の面でも逆効果です。ザラつきを作っている樹脂の層は薄く、削ると面が弱くなります。
Q4|「グラファイト」はカーボンと違うものですか?
呼び方が統一されていません。カーボンと同じ意味で使う店もあれば、別のものとして分けて書く店もあります。
この表記だけでは中身が分かりません。カーボンかグラスかと、コアが16mmかどうかを先に見てください。
Q5|ケブラーの面は買いですか?
カーボンより手に来る衝撃が小さく、それでいて回転量も出ます。ネット前で長く打ち合う展開に向く面です。2023年の終わりごろから増えてきました。
ただし日本で買える数がまだ少なく、1万5,000円あたりからになります。ザラつきは生カーボンと同じように減っていくので、長持ちを期待して選ぶものでもありません。
Q6|中古のパドルを買うとき、面はどこを見ればいいですか?
面の中央と端を指で触り比べてください。中央だけツルツルなら、いちばん打つ場所のザラつきがすり減っています。回転はもう戻りません。
あわせて、硬貨で面を軽く叩いて音が場所によって変わらないかも確かめてください。音が鈍くなる場所があれば、中身がつぶれ始めています。
まとめ|面は「素材」と「ザラつき」の2つで足りる
買う前に確かめる4つ
- 面はカーボンかグラスの2つ。1万円以下でもカーボンは選べる
- 回転をかけたいなら「スピン」「未加工カーボン」の表記と口コミで確かめる
- ザラつきは打つうちに減っていく。反発力は落ちず、減るのは回転だけ
- 大会に出るなら「USA Pickleball公認」を先に確認する
面が平らになっても、パドルとしては使えます。回転をかけて沈める球を打ちたくなったときが、2本目を考えるタイミングです。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
※記載内容は2026年9月時点の情報です。用具の規定は USA Pickleball の公式ルールブック(2026年版)と Equipment Standards Manual に基づきます。国内大会での使用可否は各大会の要項をご確認ください。
参考:USA Pickleball 公式ルールブック・Equipment Standards Manual、および海外の独立系レビューによるボールキャノン試験・表面粗さ試験の測定値。

